「価格と品質のトレードオフ」 でも書いたように、それ相応の品質を求めるにはそれ相応の対価が必要です。そして、その対価の支払いは今の品質だけでなく、未来の品質にも絡んでくるというお話。
...優秀な人材がこの世界へ向かわなくなっていった。そうして、この分野の技術力が急速に劣化した。この流れはますます加速し、冒頭のような、ひどい設計をしてしまうだけでなく、誰もその設計の悪ささえ分からなくなってしまったのだ。 ...............引用元『技術は劣化する』日経ビジネスオンラインより
...技術を維持するのは、ただドキュメントを残してキャビネットに整理しておけば良いんじゃないんです。人的にも資本的にも並々ならぬ努力が必要なんですね。...............引用元『技術は劣化する』AIR-internet-EDGEより
身近な例をあげて考えてみましょう。ここ近年のコンピューターの急激な進歩の背景に、半導体技術の進歩があげられます。半導体とはもちろん、CPUやメモリーなど今のコンピューターには欠かせない部品の事です。これらは発売直後には数万円していた商品でも1年もたたずして同じ商品が半額以下の価格で販売されていることも珍しくありません。
これは半導体の価格が、材料・製造費よりも企業としての利潤の方が多いことと、急激な製品開発の進展によってなされてきたのです。つまり、設計さえしてしまえば比較的低価格で作ることが出来、また性能は1年後には2~3倍に伸びることもざらであるという業界の状況からなされていたのです。
ところが、これはいわば諸刃の剣状態なのです。性能の向上が頭打ちになってくると、次第に上級製品と下級製品との品質の差が小さくなっていきます。そうなると、当然一般ユーザーでは下級製品で十分ということになり、次第に開発企業への利潤も少なくなっていきます。
″開発企業への利潤″と書くと、あまりよいイメージにはなりませんが少なくともこの資本主義社会には必要なものです。そしてなによりも、開発費というのはその利潤から捻出されているわけですから、それが減らされるとされに技術の進歩は伸び悩み、更に開発費が減らされるという悪循環に陥ることになるのです。半導体メーカー・自動車メーカー・薬品メーカーなどは、儲けすぎだなどと時折マスコミに叩かれることもありますが、彼らも儲けすぎなくてはならない事情があるわけです。
この様に書くと、ある程度成熟しきった分野なのだから開発費を削っても問題ないのではという方もいらっしゃることでしょう。もちろん、ある程度の削減は問題ないのですが、世の中はそううまく言ってくれるものではありません。成長を諦めたものは大抵すたれていくものです。農業が良い例です。外国製の食品に圧倒され、消費者を安い海外産の食品に奪われ、追い討ちをかけるように後継者不足という事態に陥っています。この事態が、他の業界へ広がるかどうかは我々消費者次第なのです。
現在、この不景気でメーカーはリストラの嵐です。そうなってくると、目に見えないレベルでの品質の劣化が起こってきていることでしょう。この不景気を乗り切った後はその劣化を取り返せるようメーカには頑張っていただき、我々消費者はそれを支援していく必要があるのではないのでしょうか。なんせ、この資源の乏しい日本では、技術力で勝負するしかありませんから。
といったことで、今日の記事でした。
半導体の急速な価格低下についてですが、違う理由もあります。
開発当¥¥¥¥燉ッまりに限界があり、物によっては数%程度でも出荷せざるを得ない…何て言うこともあります。
つまり市場が求めていれば、或いは将来的に回収可能であれば、価格が高くても出荷…を選択せざるを得ない場合があります。
しかし、プロセスの改善と歩留まりの向上により価格が低下する…は、普通にあることなのです。
市場原理や以外にも、価格変動の原因はある…と言うことです。
製造現場の事情…ですね。
私は、この開発現場と製造現場の意識の解離も、主題に共通する問題がある…と感じています。
ちなみに私はどちらでもなく、製造装置開発の立場です。
どちらの声も聞こえる…ですね。